イメージ 1

ムックリ、ウポポの名手、ウメ子さん。

ウメ子さんのムックリの音は文章力のない私など言い表せない音です。私なんて絶対この音は出せない。

彼女にしか出せないと思う。

そしてこの画像の「シリピリカ」というCDは私にプレゼントしてくれたものだけど、私にとってウメ子さんのベストCD。

ムックリの曲が11も入っています。

ウメ子さんちは何度か行きましたがお茶の間でたくさんのことをはなしてくれました。

ムックリのこと、アイヌのこと、自分の子供のこと、自分が子供の頃の話、こんなこと聴いちゃっていいんだろうかと思うような泥臭い話。
ウメ子さんに何か話して欲しいと決してお願いしたわけではないんだけど
ゆったりした時間の中でなぜかすごく話してくれたものだから、事実、具体的に忘れてしまったこともあるほどだけど、忘れられない言葉だっていくつもあります。

ウメ子さんは世界的なレベルのボーカリスト。
声量がすごいとか、音域が広いとか、そういうことではなくて、唯一無二のものがある。
ウメ子さんでなきゃできない、そういう質感、表現力、説得力があります。

そして、歌だけではなく、お茶の間での会話の声さえほんとに美しい。

私は晩年のウメ子さんのことしか知らないけど、おそらく晩年の声は一番よかったのではないだろうかと思います。私の思い込みかも知れませんが、そう思うほど、ウメ子さんの口が開いて、空気が揺れて、この耳に伝わってくるその生の声の美しさといったらすごかったです。

私の運転する車の中、会話がひととおり終わり、ちょっと沈黙になったときこうつぶやきました。

「明日も晴れるねぇ」。

これは車から見える夕焼けの風景を見ながら言ったんだけど
私に言ったのか、独り言だったのか、わからない。

でもその声は、あいずちや返事を返せないほど、抑揚も発音も完璧で、ショックで私はかたまってしまいました。
この言葉はきっと5秒にも満たないものだけど、私にとっては永遠の5秒であり、最高の5秒です。



ムックリのこと、アイヌのことをなんとかして伝承したいという思いが人一倍強かったウメ子さん。
死んじゃったけど、絶対無くなってない。無くならないし、またお会いできると思います。