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たしか1984年のこと。
中森明菜のサザンウィンド、桑田さんのミス・ブランニュー・デーがすごく流行っていたのを覚えている。
徒歩旅行の放浪途中で寄った、この帯広駅。
現在の駅舎ではなく以前の建物のころ。
その夜は駅の玄関(ひさしの下、屋外)で寝ることにした。毎日そんな感じ。電話ボックスでひざ抱えて寝たり、無人駅で寝たり。あのころはこんなふうに大きな駅の玄関付近で寝る旅行者(ホームレスではなく)は少なからずいたと思う。
 
最終電車が到着するまでは人様の迷惑になるので横にはなれずそれまでは駅周辺をぶらつくことになる。
 
ぶらついた。
駅を背に右手に100メートル前後のふと目にとまった怪しい喫茶店。
ティーンエイジャーの私には夜のキッサは敷居が高いが、かっこいい名前と謎めいた地下への階段に興味がわく。
 
その喫茶店は『白い地下』という。
入り口には一人の女性を描いた不思議な絵がかかっている。
 
 
ドアを開けると、店員はおらず、長いベンチで酒臭い客がイビキをかきながらひとり寝ている。
どうすればいいかわからず店主が来るまでジッとカウンターに座って待っていた。
 
やがて、寝ていたオヤジの客がムクと起き上がり、驚愕の一言。
「あ、いらっしゃい」
 
 
店主さんに「ロシアンティー」を頼んでみた。
はじめてのこの紅茶は、砂糖のかわりに「このジャムを適量混ぜなさい」とのことだったが、一生忘れられない一杯となった。
大きいカップに紅茶が入っており、ジャム壷が別にある。
スプーンですくって適量混ぜる。
うまい。
ロシア人はみんなこうやってんのかなぁ。
若造にはちょっと大人な味がした。
 
 
店を出て、深夜の駅玄関に戻り、夜空をみながら横になって眠った。
午前二時ころ、街のアンチャンたちが「うお、こんなところで寝てるぞ、こんなとこ人が寝るとこじゃねぇよなっ。けっとばしてやるか」と数人の仲間と笑っているのを寝たふりで聞いていた。一人だしちょっと怖かった。寝袋には入っていたが、微妙に横向きになり顔をまともに踏まれないように手を顔の近くに待機させていた。結局は何もなく、朝まで眠っていた。
 
 
 
 
これが私と喫茶店とが出会った初期の物語のひとつ。
 
あれから『白い地下』には行っていない。
帯広にはイベントが数回あったので来ているが電車ではなく車だったし時間に余裕がなかったので駅付近には寄っていない。
 
あの『白い地下』でのひとときはまるで幻の時間のよう。
 
駅前は再開発されたがあの界隈の現在はどうなっているんだろう。
今回は一人でゆっくりできるし行ってみようかな・・・。