ツル茶ん クラシック
長崎県長崎市魚の町3-15
ああ、ツルちゃん クラシック。
はるばる長崎に来てほんとによかったと感じた店です。
上階はアパートになっているノッポな「ツル茶ん」。








アイスコーヒーで一服したあと、すばらしい店内の写真をとりたくてお店の方(女性)とお話をしましたが、ちょうどマスターさんもいらっしゃっいました。
川村忠男さんとおっしゃいますが、いや、マスターさんというか、その上の方なのかな。1925年から続くこのツル茶んの二代目(今年で83才)とのこと。初代は川村岳男さんです。
北海道の話や音楽芸能の話、コーヒーと喫茶店についてなど、とてもゆっくりと楽しい時間を過ごすことができました。
マスターさんは私の席の近くにすわってニコニコしてお話してくれます。
そして、たいへん明晰で博学だと感動しました。

さて、マスターもぼくも場所をカウンターに移り、話を続けます。
マスターに店名の由来をうかがうと、このような話でした。
「正チャンの冒険」というマンガが流行していた頃(1924)、ツル茶んは開業しました(1925)。
ボンボリのついた帽子をかぶった主人公の「正チャンの冒険」はとても人気があったので長崎の街にも○○ちゃんという店が多かったそうです。
そこで、「ツルの港にできた最初の喫茶店」の意味で「ツル茶ん」に決定。
ツルというのは鶴のことで、いまでは埋め立てられて形がかわってしまったけど
当時の長崎の港は鶴の形をしていて、県庁のあたりが鶴の喉のあたりだったとのことです。
へぇ・・・深いです。

マスターによりますと、一番古い喫茶店は明治二十一年、上野の「可否茶館」とのことです。ところが時期尚早ということもあり4年ほどで廃業。鄭永慶という創業者は、長崎に縁のある人でした。
「道頓堀行進曲」という歌の「何でカフエが、忘らりょか」の歌詞を紹介してくれました。
マスターさんは、最近ようやく「カフェ」が「カフェ」として本来の意味を取り戻したと感慨深げ。
ご存知の方も多いと思いますが、戦後になるまで、「カフェ(ー)」とは風俗営業の類でした。最近になって、やっと「カフェ」はコーヒーを飲む場所に位置付けられています。
なお興味深い話はつづきます。
「子供の頃、喫茶店は当時のお年寄りは喫茶店のことをふざけて「きっちゃてん」と呼んでいました」。
「ところが・・・」
「In a little café というドイツのタンゴ、あの日本語訳のレコードを聴いたとき、"ほんとに素敵なキッチャテン"と発音していたんですよ。」
「それに・・・NHKの藤山一郎とフランク永井の対談で、藤山一郎が「はじめはキッチャテンと呼んでいて、これが普通の読み方だったのでしょうね」
いやぁ、ためになります。感動しました。
さらに当時はコーヒー豆を「コヲヒ豆」と読んだらしい。大正~昭和初期の響きですね。









昭和七年のクリスマスの写真だそうです。
この後、写真の中の関係者の半数以上は戦死しました。
惨い時代です。










最後に、「もうひとつ、ツル茶んがあるので、もしよろしければのぞいてやってください」、とのことで、そのあと行ってみました。
長崎市油屋町2-47
