喫茶ミカ
秋田県南秋田郡五城目町下タ町40-4
前日、能代市にいたぼくは、昭和24年の建物で営業を続けるエーワンベーカリーという古いパン屋に立ち寄っていた。
もともとはカステラが名物のパン屋さんらしく、家屋壁面にも「加壽天似羅(カステイラ)」と書いてある。

朝食用にイチゴシャーベットパン (90円)とミソパン (35円)を選び、
店内のテーブルでかじりつつ、店の歴史や能代市の昔話をママさんに聞いた。
能代は林業が盛んで人の流れも絶え間なかったが、いまは人が都会に流出してこんなに寂しくなった、というような話をされていたが、県内の「五城目」という町も林業で栄えたことを知った。
ゴジョーメ・・・!?
変わった名前で、なんとなく気になったため早速向かってみることに。だって、秋田は好みの喫茶があまり無い(無くなった)県で、暇なんだもん。
五城目町は能代市から約30キロ、まず八郎潟という駅まで電車で行き、そこからバスで向かうのが一般的のようだ。
五城目に着いたバスを降り、町を歩いても別にコレといって足が止まるような対象はなく、退屈を感じ始めた。
なんとなく町の名前に惹かれて来てしまったが、もう帰ろうか。
しかしそんな時、植物がうっそうと茂った店が突然現れた。
喫茶ミカ。
あまりに強烈な存在感。


店全体は蔦に覆われ、さらに鉢植えの観葉植物がジャングルのように所狭しと並ぶ。
看板においては有名なキャラクターがまっすぐ腕を伸ばしコーヒーカップを眺めている。





うえーー、イイ!!!
なにはともあれ入店したいと感じた。
でもドアは施錠されており、窓から見える店内も真っ暗。
て、定休日か?



これは入れない、残念賞だと感じていると、どこからか一匹の猫ちゃんがゆっくりとやってきた。

この猫、妙に人に慣れていて、なにかを伝えたいような目をしている。

この子が足元から離れないので、
しばらくしゃがんでひとり言のように話しかけていると
今度は近所の酒醸造所に勤務する男性が通りがかった。
「あれぇー、やってないんですか!?」と不思議そうに言い、家屋に向かって・・・・
「おばちゃーーーん!」と大声で何度か叫び続け、ママさんを呼んでくれた。
マスターが外出中とのことだったが、ママさんは10分ほど待つとドアを開けてくれた。
いやぁ助かった。
あれ、気がつくと猫は音もなくどこかに行ってしまっていた。← 不思議。
ということで無事入店・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・暗い・・・!
店内はほんとうに暗い。
外が明るい天気だったこともあって、ほとんど何にも見えないくらい。
いつも昼間からこんなに暗くしているようで、目が慣れるまでしばらく時間がかかったほどだ。


カウンターに案内してくれたママさんにコーヒーをお願いし、ボソボソながらいろいろ話したような気がする。
ミカは1962年開店のジャズ喫茶。大量のLPレコードと高級アンプが、かの名機JBL4343を鳴らしている。
コーヒーはおいしく、なぜか大量の果物もあった。





ミカという喫茶店の紹介については、この魅力を読者に伝達できる文章力がないので、以上簡単なものにとどめたい。
件のエーワンベーカリーに寄らなければ、このミカにも出会えなかった。
ネコにまとわりつかれていなければママさんを呼んでくれた工員にも声をかけられなかった。
ママさんからもらった二種類の燐寸を眺めながら、つくづく運がいいと思った。


この初訪問は2014年。
これは良い喫茶を発見してしまった。魂が震えます。
今後は深夜版をレポートしたい。