珈琲 らんぶる
富士宮市大宮町17-14
本当に美しい内装の喫茶店というものをいくつか経験している。
ちょっと思い出してみても、鶴岡市のローリエ、小松市の泉、東京のエノモト、八王子のフランク、熊谷市のK、都留市の旅苑、和歌山市のヒスイ、大阪市のマヅラ、広島市のパール、呉市のゴールド、防府市のエトワル、熊本のシグナル etc....。
そしてここ、昭和35年にオープンした富士宮市の「らんぶる」も、2007年に偶然見つけた時はその個性と感性に正直驚いた。
知人に教えてもらった富士市の「りんでん」を訪ねた2013年にも、近いので寄った。
それから数年たち今年に入って存続を心配せざるをえないようなことがあったのでとても気になっていたが、札幌でドンヨリと気にしていても仕方がないんで千歳空港に向かい羽田へ、羽田から富士市へ。「りんでん」にご挨拶したあと、やがて高くそびえる富士山が街並みに映える富士宮市の街に着いた。
「らんぶる」が見えてきた。看板が路上に出ているから営業しているかな・・・。

よかった、やってる!

黄色いお花畑のような外観に植物がよく調和している。




建物の側面。凹凸のある壁に上手に描いてある。

素晴らしいフランス製のタイル。


早速、コーヒーを注文させていただいた。
気になっていた気持ちの中の深い霧がサッと晴れて、とても落ち着いたことを自分で感じた。


矢印のような形の希少な照明器具。
拭き掃除のときに重みをかけてしまって落下したものもある。




一方これはカウンター側の照明器具。

下部のタイルアートも秀逸でほれぼれする。
この店を手掛けた建築家・設計者はすでに亡くなったが、工事の出来栄えがほんの少しでも気に入らない部分があるとおしみなく壊してしまう、非常に仕事に厳しく、芸術肌だったという。




店内の真ん中あたり。タイルアートはまだ連続している。
ほんとうに美しいと感じる。
この店の近くには以前映画館があり、いろいろなショーもやっていた。
その流れで、「黒い花びら」がヒットした水原弘やマヒナスターズも店に来たそうだ。


豪華なクリスタルガラスシャンデリア。
以前は三つあったが現在はこれひとつになった。

ロゴ入りのカップ&ソーサー。



白い布カバーのチェアがある一画も素敵だ。

以前はここに本棚があったと記憶しているが、数年前からこのような什器に変わり、飛行機のプラモデルを展示している。
なぜこれを展示しているのかとママさんに伺うと、ここの常連客(90歳)の方がまだ十代の頃出兵し、ゼロ戦(正しくは零式艦上戦闘機)のパイロットをしており、ライフワークになっていたようだ。
そのパイロットにとても興味が湧いた。

ひとつひとつこまめに鑑賞していると、病気で歩くのも大変そうな社長がここまで来てくださり、もう故人となったそのパイロットの話やゼロ戦が格闘性能にいかに秀でていたかをたくさん聞かせてくれた。
実戦想定の過酷な練習など話を伺って、たいへん感慨深い。
ただこのパイロットは、もう明日か明後日に自爆による「特攻」に出動するはずだったが、それこそ時のいたずら、運命でその機会はなかった。
身を投げ出して日本を守ろうと覚悟していたのに乗れなかったからこそ、高齢で亡くなるまでその思いをプラモの翼に載せたのだろうか。



ピエールカルダンのデザイナーサインがついている。
電球と枠のスキマの作り方が絶妙。

この写真とても好きです。

コーヒーのあとはクリソを飲んだ。



社長のおかげで貴重なパイロットの話が聞けた。

社長はドッグショーコンテスト(プードル)の審査委員長もされていた。
プードル界では世界的に有名な日本人として古い洋書にも社長が紹介されている。
ママさんがいろいろ見せてくれた。



ここは一番奥のスペース。現在は使われていない。
今回初めて聞いたのだが、ここは昔、天井も高い吹き竹になっていて噴水と日の射す明るい庭があったそうだ。
しかしこの富士宮市の土壌は水分が多く含まれる場合があるそうで、いろいろと支障がでてこの空間にしたそうだ。
なお、店内の中央部、現在はプラモが展示されているあたりにも池があった。

ストライプソファ。テーブル上にはプラモ。

ここにもタイルアートが目を引く。


珈琲らんぶる、ぜひ訪ねてください。