猫と95歳ママさんのいる喫茶店、喫茶悦。

北海道登別市中央町2丁目6


 

以前も紹介した、三本脚の老猫と95歳のママさんが営業している喫茶店です。


たまにドアを開けてママさんや常連さんと世間話をしてくるけれど
こんなに色々な感情を揺さぶられる喫茶店をぼくは知らない。

話の内容自体は昔話が半分以上で、みなさんの人生で起きたこと、
当時の地域の様子、時代の移り変わりとともに起きたことなどだが、
書物では知ることのできない時の連鎖を感じ取れる。
みんな誰しも、一生懸命生きてきた。
自分からは話さない人もいるけど、少し質問してみたら豊富な過去の記憶が
溢れだす。
皆、生まれたからには必ず死ぬ。
でも死ぬまでの間、色々な人に出会い、仕事に就き、失敗・成功、物事や自分のことをわかったつもりでいたら想像もしていないようなことが身に起きたりして様々な勉強をすることになる。
年をとるたびに、今まで見えなかったものが見えてくるし、見えていたものが見えなくもなる。できていたことができなくなり、できなかったことができるようになる。人にされていたことを人にしてあげられるようになり、してあげてたことを人してもらうようになる。

若いころには想像できなかった自分の「老い」という現象に、時間と生命を
感じ、気持ちのどこかで死というものへの準備に入る。

まもなく閉店するであろうこの喫茶でただコーラを飲んで座っているだけで、文字では書けない感情に揺さぶられる。胸のなかで、平常と緊張と安らぎと喜びと悲しみ、そしてもどかしさが混じりあう。


店をまもなく出ようと思った時、ママさんが目に力を入れてこう呟いた。

「あなたも、生き抜くのよ。」

この喫茶のレポートは、あるいは今回で終わりかもしれないが、
一生忘れることはないだろう。



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