1972年、喫茶店で。

 

 

今は1972年夏。 

 

テレビでは、田中さんというおじさんが新しい総理大臣になったと流れています。

 

そんなときに、ぼくはノホホンと、商店街の小さな喫茶店にいます。

 

小学生だからメロンソーダを飲んでいるのです。

 

緑に輝く中に氷が浮いていて、うっとりするくらい綺麗です。

 

自分にとってはめったに飲めないごちそうなので、ガラスコップの底に僅かに残ったソーダをストローで全部吸い上げました。

 

するとジュッジューという音が出ちゃって「行儀が悪い、やめなさい」と父ちゃんに怒られちゃった。

 

だって、一滴でも、もったいないんだもん。

 

 

 

ここは札幌市南区の藻岩下、藻岩山と豊平川に挟まれた住宅街です。

 

短い商店街には小さなパチンコ店があり、その隣ぐらいに喫茶店があるのです。

 

オイルショックが起きるのは来年だから、今はほんとに穏やかです。

 

しんぱち、びっくり屋、勉強堂、ほそかい商店、もんざき、どの店もお客さんいっぱいなんだ。

 

このあと父ちゃんと市場(数年後のショッパーズ藻岩)で、買い物をして帰る予定です。

 

ほんとはいつもの吉田商店に駄菓子買いに行きたいんだけど・・・。

 

だってあそこのクソジジイは子供だけならいっつも怒鳴るんだよ。

 

それが大人といっしょなら態度がコロッと変わるんだよなぁ。

 

 

 

うん、そろそろ喫茶店を出る時間のようです。

 

喫茶店って、夢のような世界なんだね。ちょっと興味を持ったよ。

 

じゃあね。

 

 


 

 

 

時は経ち、いまは1979年冬。

ここはススキノ近くの交差点のビル。

デートに誘った彼女を待っているところです。

転校してからしょっちゅう文通してるけど、月に1回は

会っておしゃべりしたいからね。

今日はちょっと背伸びしてサテンでデートってわけ。

選んだ店はリチャード三世。

窓から街の様子を見下ろせる。

この店のすごいところは、電話機がついているテーブルがあるから、

公衆電話まで行かなくてもここで電話連絡できること。すごいよね。

前回はさっぽろテレビ塔の入り口で待ち合わせしたけど、約束の時間を

一時間すぎても彼女は現れなかった。

後で分かったたんだけど体調悪くなったらしくて。

待ち合わせは、やっぱり喫茶店がいいって痛感したよ。

 

 

 

さて、コーヒーが来た。大人みたい。

角砂糖何個入れようかな。

ちょっと口をつけながら待っていよう。

 
何を話そう。
 
デヴィッド・ボウイの新作ロジャーがぼくらの話題になるのは間違いないな。

 

 

 


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