士別市(しべつし)という北海道の旭川市より北にある街にあった『ぐれえす』という名の小さな喫茶店。
士別には喫茶店めぐりで行ったことはありましたが、駅前や国道に面していないこともあり二度目の士別訪問で見つけた記憶があります。
可愛く、絵になる外観で「一目ぼれ」したぼくは何度か行きましたが、いつの日か無くなってしまいました。
つい最近も士別市には行ったのですが、『ぐれえす』があった場所は更地になっているのを知っているので、悲しいのであえて寄りませんでした。
さて本日は、一通の手紙を紹介したいと思います。
それは、当ブログの10年前の記事を見て連絡をくださった方で、「喫茶ぐれえす」のお孫さんからいただいたものです。
長いことブログをやっていると、閉店してまった喫茶店のお孫さんからメールをいただくことが増えてきています。とても嬉しいです。
今回も、とても丁寧に書かれており感動しました。
(もう少し下のほうに載せてあります)
◆今回届いたメール◆
「2011年8月11日にご投稿されている士別市の喫茶店「ぐれえす」の記事を拝見致しました。
私は「ぐれえす」店主の孫です。
2013年にも来店して下さったようで、計三度の紹介記事がありました。
かなり過去の話になってしまいましたが、祖母の喫茶店を紹介して下さってありがとうございます。
遅ればせながらお礼申し上げます。写真も残っており、嬉しい限りです。
ブログ記事でも書いてくださったように、祖母はとても快活で、それでいて豪快で格好よくてお茶目な店主でした。煙草(確かラークでした)を吸い、クロスワードの懸賞雑誌をしながら店番をしているなんてこともありました。
子供の頃私が父用のアイスコーヒーを貰いにおつかいに行くと、ガラスの器に入ったアイスクリームにチョコレートをたっぷりかけて出してくれました。
母に内緒でクリームソーダが出される時もありました。
氷とアイスの接している部分のしゃりしゃりの所が好きでした。
田舎で、お客さんは殆ど常連客ばかりでしたが、不思議とずっと経営できていました。
私がおつかいに行くと必ずパチンコの景品のお菓子をくれるおばさんや、無口で一言も喋らずカウンターの端に座ってトーストセットを一時間かけて食べているおじさん、テレビのワイドショーを見ながら永遠にお喋りしているおばあちゃん、仕事の休憩中にちょこちょこコーヒーを飲みに顔を出す私の祖父。
古びてお世辞にもおしゃれや綺麗とは言えない店でしたが、いつもコーヒーと煙草の香りがするとにかくレトロな空間でした。
コポコポ鳴っているサイフォンが理科室の実験用具のようでずっと眺めていました。
大人になったらコーヒーを淹れて貰おう、と密かに憧れていました。
しかし私も中学高校と思春期を迎えるにつれ、ほとんど店に行くことはなくなってしまいました。
そのうちに祖母は癌を患い、喫茶店も取り壊すことになりました。
あの天井にぶら下がっていたご当地キーホルダーの数々も、全て処分してしまいました。
店内写真も数枚撮りましたが、データがどこにあるか分からず、今は祖母の仏壇に飾ってある分くらいしかありません。
亡くなったのはもう何年も前のことになります。
子供だった私も今では大人になり、毎日インスタントコーヒーを口に流し込みながら、祖母のコーヒーをきちんと味わえばよかったと苦い思いになります。
つい先日、祖父が祖母の元へ逝きました。
そんなこともあってふと喫茶店のことを思い出し、なんとなく検索してみたところ、貴方のブログを見つけました。
ナポリタンの写真もあり、とても嬉しかったです。そうだ卵も入っていたっけ、と懐かしい気持ちになりました。
祖母にこちらの記事を見せたかったな、もっと早く見つけていればよかったなという思いです。
私の思い出話になってしまい申し訳ありません。
長文になりましたが、再度お礼を申し上げます。
祖父、祖母も天国で喜んでいると思います。
できれば記事の方も削除せずに残していただければ幸いです。」
思いがけず、ゼリーをいただいた。
実はこの30分ほど前にぼくは洗剤(キュキュットやミューズだったかと)をママさんにいくつかお渡ししていたのです(自分も誰かからもらったのだけど使う予定がなかったので)。
ゼリーはきっとそのお礼だったと思います。
「前も来てくれましたよね」って笑っていました。
お孫さんにこのエピソードをお伝えすると、このように返事がありました。
「洗剤を下さったのですね。
祖母はお客さんに手に入ったお菓子でも日用品でも何でもあげる癖のようなものがあったので、逆に純喫茶ヒッピー様から頂いたこと、嬉しかったのだと思います。ありがとうございます。
祖母はお客様のことをよく覚えている人で、数回来たことある方には、トーストセットのゆで卵の固さを好みに合わせて変えたり、コーヒーにつけるガムシロップやミルクの量を減らしたりしていました。」
こういう感じに干してある店内の様子は実は自分の好み。
「ぐれえす」は何から何まで良かった。
以上、本日は忘れられない喫茶店「ぐれえす」のことをお話ししました。
お読みいただきありがとうございます。
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