声という名の純喫茶をご存知だろうか。
声は札幌の喫茶店として昭和中期から喫茶通(つう)あるいは感性の高い人たちから親しまれた。
市電の走る道沿いにあり、年季の入った建物と「声」「声」「声」と書かれたオレンジ色のひさしが目を引いた。
店名の由来は「人間は声をださないと駄目。思っているだけでは気持ちは伝わらない。感謝の気持ちは声にださないと。」というようなことからだとママの猪狩和枝さんは話す。
もともとは、商売をはじめるときにみてもらった易者が「声をかけて商売していれば細々とでもやっていける」と伝えたからだったと思う。
営業当時は札幌市の都心部に近いため、けっこうにぎやかな場所だったのだが、
店をはじめた昭和39年当時はあたり一面ススキが生えていた。
近くに三吉神社があり、声と並んでススキの中に建っていたのだ。
ガタンゴトンと市電の走行音とコーヒーの香がまじりあう店内。
さらに創業当時から人気なのは太麺のナポリタン。
それと、昔は半分近いスペースがラーメン屋だったと思う。ラーメンスペースが無くなったあとも、声ではそのラーメンも提供していたから、ここはラーメンが美味しい喫茶店だった。
ぼくに「ちょっとみてよ」と壁の下を指さしてあっけらかんと笑う。
「基礎のところが傷んじゃっていつ崩れてもおかしくないわよ」。
結局は、立ち退きによりそれから数年で閉店したが、最終営業日の賑わいは大変なものだった。
テレビやラジオ、数々の常連客・・・。
あんなに花束で埋もれた喫茶店は、あれ以来見た覚えがない。






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