珈琲軽食 貞廣
北海道砂川市東一条北2-1-19

札幌と旭川のだいたい中間点、空知(ソラチ)と呼ばれる豪雪地帯の中ほどに「砂川市」がある。
砂川駅を出て左に折れると、そこにあるのは古く小さな商店街。
カメラ屋や寝具店など、年季の入った個人商店がポツポツと並び、古い印鑑屋と喫茶店が寄り添うように営業を続けている、そんなひなびた商店街だ。
砂川市自体が人口2万人を切っているため、駅前ながらひっそりと寂しい商店街なのだが、
店主の馬面宏さん・ミチ子さんが「コーヒー貞廣」をオープンした昭和42年頃の空知は石炭バブルの真っただ中。
いくつものヤマ(炭鉱)から吐き出される男たちとその家族で商店街はごった返し、毎日が祭会場のように賑やかだった。
街はすっかり静かになってしまったが、「貞廣」には当時と変わらない珈琲の香りが満ちている。
オレンジ色に輝く星雲のようなペンダントライトがしっとりとテーブルを照らし、無数のキーホルダーや民芸品が陳列され、
喫茶店では珍しいロッキングチェアには、ママさん手製の座布団が敷かれている。
店の内装はマスターである宏さんの手作りだ。90歳まで自ら焙煎した驚くほど香ばしい豆を作り続け、その豆を使い、サイフォンで丁寧に淹れたブレンドコーヒーを提供してきた。
筆者は様々な喫茶店を尋ね歩いているが、これほどまでに香ばしいコーヒーにはなかなか出合えない。
しかし昨年、この店とママさんを残し、マスターは惜しくも他界してしまった。
遂に閉店してしまうのか──と案じたが、「店に来ると、お父さんといっしょにいるような気がする」
ママさんはそう言いながら、マスターの焙煎手順を見事に再現。
常連客も「この味!」と舌鼓を打つ究極のコーヒーが、今日も熱い湯気を上げている。

隣のハンコ屋さんの佇まいもただ者ではない。



さて、貞廣さん。



ロッキングチェア


こういうペンダントがついたストーブも少なくなったかも?
当たり前だったのにね。





照明器具を真下から見上げると燃える手裏剣のようだった。





マスターは小さな写真の中に入ってしまったが、
ママさんは店に居る方がマスターと一緒にいるような気がするとおしゃっていた。
ずっとここで二人で喫茶店をされていたんだから、そうですよね。


夜の貞廣

もっと夜。

追悼
素晴らしい喫茶店を提供してくれたマスターに感謝。
ご冥福を祈念いたします。ありがとうございました。

2015年のマスター


